価額協定保険特約とは、火災保険やその他の種類の財産保険において使用される一種の特約です。
この特約の主な目的は、保険契約者(被保険者)と保険会社が事前に保険対象物(例えば建物や家財など)の価値について合意し、その価値を保険金額として固定することです。
価額協定保険特約について
事前の価値合意
保険契約者と保険会社は、保険対象となる財産の価値を事前に協定します。この価値は「保険金額」として契約に記載され、保険事故発生時の支払い基準となります。
再調達価額または時価額
保険対象物の価値は、通常、再調達価額(新しいものを購入するための費用)または時価額(現在の市場価値)のいずれかに基づいて決定されます。これにより、保険契約者はリスクとニーズに応じた適切な評価方法を選択できます。
新価は、同等の新品を購入するための費用に基づく評価です。経年劣化は考慮されず、新しいものを購入する完全な費用を反映します。
損害発生時の支払い
保険事故が発生した場合、保険会社は事前に合意された保険金額を支払います。この額は実際の損害額に関わらず固定されているため、保険契約者は事故発生時に市場価値の変動やその他の評価問題に悩まされることがありません。
価額協定保険特約は、特に住宅保険や商業財産保険でよく使用されます。これにより、保険契約者は財産の価値に関する不確実性を減らし、保険事故発生時の財務的な保護を強化できます。
過去問①
火災保険の価額協定保険特約に関する次の記述の正誤の組合せとして、正しいものを下の選択肢から1つ選び、その番号を答えて下さい。
ア.この特約では、保険の対象である建物が火災により保険価額の 10%に相当する損害を被ったときは、損害保険金に上乗せして特別費用保険金が支払われる。
イ.この特約は、住宅総合保険契約または住宅火災保険契約に限り、付帯することができる。
《選択肢》
1.アおよびイともに正しい。
2.アは正しいが、イは誤っている。
3.アは誤っているが、イは正しい。
4.アおよびイともに誤っている。
解説
ア. 「この特約では、保険の対象である建物が火災により保険価額の 10%に相当する損害を被ったときは、損害保険金に上乗せして特別費用保険金が支払われる」という記述が誤っているとされる理由は、一般的に、特別費用保険金は特定の条件下でのみ支払われるものであり、保険価額の一定割合の損害を受けた際に自動的に支払われるわけではないからです。
通常、特別費用保険金は、例えば再建築費用が予想を超えた場合や、法令等による追加の費用が必要な場合など、特定の事情下でのみ支払われます。
イ. 「この特約は、住宅総合保険契約または住宅火災保険契約に限り、付帯することができる」という記述が誤っているとされる理由は、価額協定保険特約は他の種類の保険契約にも適用可能であるためです。この特約は住宅保険に限らず、商業用建物やその他の種類の建物をカバーする保険契約にも適用されることがあります。したがって、住宅関連の保険契約に限定されるわけではありません。
これらの点から、両方の記述が誤りであると判断されています。
過去問②
火災保険の価額協定保険特約に関する次の記述の正誤の組合せとして、正しいものを下の選択肢から1つ選び、その番号を答えて下さい。
ア.この特約では、家財を保険の対象とする場合、保険契約者と損害保険会社の間で保険の対象について協定する評価額は、再調達価額(新価)または時価額のいずれかを選択することができる。
イ.この特約を付帯して火災保険契約を締結する場合、保険の対象である建物が全損となり、2,500 万円の損害保険金が支払われるときは、損害保険金の 10%に相当する 250万円が特別費用保険金として損害保険金に上乗せして支払われる。
《選択肢》
1.アおよびイともに正しい。
2.アは正しいが、イは誤っている。
3.アは誤っているが、イは正しい。
4.アおよびイともに誤っている。
解説
ア. この記述は「家財を保険の対象とする場合、保険契約者と損害保険会社の間で保険の対象について協定する評価額は、再調達価額(新価)または時価額のいずれかを選択することができる」と述べています。
これは火災保険における一般的な規定です。家財の保険では、保険契約者は家財の評価方法として、新しいものを購入するための費用(再調達価額)またはその時点での市場価値(時価額)のいずれかを選べます。したがって、この記述は正しいです。
イ. 「この特約を付帯して火災保険契約を締結する場合、保険の対象である建物が全損となり、2,500万円の損害保険金が支払われるときは、損害保険金の10%に相当する250万円が特別費用保険金として損害保険金に上乗せして支払われる」という記述は一般的な火災保険の特約においては正しくありません。
特別費用保険金の支払いは、通常、特定の条件下でのみ行われ、建物の全損の場合に自動的に損害保険金の一定割合が上乗せされるわけではありません。特別費用保険金の支払い条件は契約によって異なりますが、通常は損害発生時の追加費用をカバーするもので、事前に定められた割合で自動的に支払われるものではないため、この記述は誤っていると考えられます。
過去問③
火災保険の価額協定保険特約に関する次の記述の正誤の組合せとして、最も適切なものを下の選択肢から1つ選び、その記号を答えてください。
1.この特約における建物の保険金額は、保険契約者と損害保険会社との間で協定した再調達価額(新価)に約定付保割合を乗じて算出する。
2.この特約を付帯した住宅総合保険契約では、水災によって建物または家財にそれぞれの保険価額の 30%以上の損害が生じた場合、損害の額または保険金額のいずれか低い額に縮小割合 70%を乗じた額が水害保険金として支払われる。
《選択肢》
ア.1および2ともに正しい。
イ.1は正しいが、2は誤っている。
ウ.1は誤っているが、2は正しい。
エ.1および2ともに誤っている。
1. この記述は、「この特約における建物の保険金額は、保険契約者と損害保険会社との間で協定した再調達価額(新価)に約定付保割合を乗じて算出する」と述べています。
価額協定保険特約では、保険金額をあらかじめ定めておき、保険事故発生時に実際の損害額に関わらず、この協定された金額が支払われます。建物の保険金額を算出する際には、再調達価額(建物を新しく建て替えるための費用)に、約定された保険割合を乗じて算出します。これは火災保険において一般的な方法です。したがって、この記述は正しいです。
2. この記述は、「この特約を付帯した住宅総合保険契約では、水災によって建物または家財にそれぞれの保険価額の 30%以上の損害が生じた場合、損害の額または保険金額のいずれか低い額に縮小割合 70%を乗じた額が水害保険金として支払われる」と述べています。
これは、特定の条件下での損害(この場合は水災によるもの)に対して、保険金額の一定割合を基準にして保険金が支払われることを示しています。水災などの特定のリスクに対して、保険金額を特定の割合で計算して支払うことは火災保険の特約において一般的です。したがって、この記述も正しいです。
過去問④
火災保険の価額協定保険特約に関する次の記述の正誤の組合せとして、最も適切なものを下の選択肢から1つ選び、その記号を答えてください。
1.この特約は、普通火災保険契約(工場物件)に付帯することができる。
2.この特約では、保険の対象である建物が火災により保険価額の 10%に相当する損害を被ったときは、損害保険金に上乗せして特別費用保険金が支払われる。
《選択肢》
ア.1および2ともに正しい。
イ.1は正しいが、2は誤っている。
ウ.1は誤っているが、2は正しい。
エ.1および2ともに誤っている。
1. 「この特約は、普通火災保険契約(工場物件)に付帯することができる」という記述が誤っているとされる理由は、通常、価額協定保険特約は住宅用の保険契約に主に適用されるからです。
工場物件のような商業用不動産や特殊な物件に対しては、この特約の適用が制限されるか、もしくは全く適用されないことが一般的です。工場物件の保険価額は、その複雑性や特定のリスクにより、異なる評価方法が必要とされることが多いためです。
2. 「保険の対象である建物が火災により保険価額の 10%に相当する損害を被ったときは、損害保険金に上乗せして特別費用保険金が支払われる」という記述も誤っているとされる理由は、特別費用保険金の支払いは、通常、特定の条件下でのみ行われ、保険価額の一定割合の損害を受けた際に自動的に支払われるわけではないからです。
特別費用保険金は、例えば再建築費用が予想を超えた場合や、法令等による追加の費用が必要な場合など、特定の事情下でのみ支払われます。
特別費用保険金=全損の場合に支払われる保険金
過去問⑤
火災保険の価額協定保険特約に関する次の記述の正誤の組合せとして、最も適切なものを下の選択肢から1つ選び、その記号を答えてください。
1.この特約では、家財の評価額を協定する際、再調達価額での約定に限られる。
2.この特約では、評価額に対して保険契約者と付保割合が約定されるが、建物と家財で別々に約定付保割合を定めることができる。
《選択肢》
ア.1および2ともに正しい。
イ.1は正しいが、2は誤っている。
ウ.1は誤っているが、2は正しい。
エ.1および2ともに誤っている。
1. 「この特約では、家財の評価額を協定する際、再調達価額での約定に限られる」という記述が誤っているとされる理由は、価額協定保険特約において、家財の評価は再調達価額に限定されるわけではないからです。
家財の評価には、通常、再調達価額(新しい同等品を購入するための費用)だけでなく、時価額(現在の市場価値)も選択肢として利用可能です。保険契約者は、自分の状況やニーズに応じて、どちらの評価方法を使用するかを選択できます。
2. 「この特約では、評価額に対して保険契約者と付保割合が約定されるが、建物と家財で別々に約定付保割合を定めることができる」という記述が正しいとされる理由は、価額協定保険特約では、建物と家財の保険価額に対して異なる付保割合を設定することができるからです。
これにより、保険契約者は建物と家財のリスクや価値を異なって評価し、それぞれに適した保険カバレッジを選択することが可能です。例えば、建物に対しては高い付保割合を選択し、家財に対しては低い付保割合を選択することができます。
過去問⑥
火災保険の価額協定保険特約に関する次の記述の正誤の組合せとして、最も適切なもの を下の選択肢から1つ選び、その記号を答えてください。
1.この特約は、住宅火災保険契約および住宅総合保険契約に限り、付帯することができ る。
2.この特約の保険金額は、保険の対象の評価額に約定付保割合を乗じて算出される。
《選択肢》
ア.1および2ともに正しい。
イ.1は正しいが、2は誤っている。
ウ.1は誤っているが、2は正しい。
エ.1および2ともに誤っている。
1.「この特約は、住宅火災保険契約および住宅総合保険契約に限り、付帯することができる」という記述が誤っている理由は、価額協定保険特約は、住宅火災保険契約や住宅総合保険契約に限定されるものではないからです。
この特約は、商業用不動産や特殊な物件を含むさまざまなタイプの財産保険契約に適用可能です。目的は、保険契約者と保険会社が保険対象物の価値について事前に合意し、その価値を保険金額として固定することです。
2.「この特約の保険金額は、保険の対象の評価額に約定付保割合を乗じて算出される」という記述が正しい理由は、価額協定保険特約では、保険契約者と保険会社が保険対象の評価額について合意し、その額にある割合(約定付保割合)を乗じることで保険金額を決定するからです。
これにより、保険事故が発生した際には、合意された保険金額が支払われます。これは、実際の損害額に関わらず、事前に合意された額が支払われることを意味します。
時価は、財産の現在の市場価値に基づく評価です。経年劣化や市場状況が価値に影響を与えます。