鑑定人試験対策:対物賠償保険

保険のカバレッジ範囲、示談交渉、保険金の支払い条件などに焦点を当てています。特に、被保険者やその家族の所有物への損害、第三者への損害賠償、保険金請求権の時効、保険会社の示談交渉権限に関する質問が多いです。

また、家族間排除条項や代位請求権など、保険の特定条項についての理解を問う内容も見られます。これらの質問は、自動車保険の基本原則と特定の状況下での保険適用性についての深い知識を要求しています。

対物賠償保険

対物賠償保険は、被保険者が自動車の運転中に第三者の財産に損害を与えた場合に、その損害を補償する自動車保険の一部です。
これまでの出題傾向を踏まえると、対物賠償保険に関連する重要な点は以下の通りです。

第三者の財産への損害補償

対物賠償保険は、被保険者が運転中に他人の車両や建物など、第三者の財産に損害を与えた場合に、その修理費用や損害賠償費用を補償します。

家族間排除条項

多くの自動車保険では、被保険者の家族が所有する財産への損害はカバーされません。これは保険の濫用を防ぐための措置です。

代位請求権の活用

被害者は、被保険者の保険会社に対して直接損害賠償を請求することができます。これにより、被害者は迅速に損害の補償を受けることが可能になります。

間接的な損害の補償

対物賠償保険は、直接的な損害だけでなく、間接的な損害(例えば休車損害や代車費用)もカバーすることがあります。

時効の存在

保険金請求権には時効が設定されており、一定期間(通常3年)が経過すると、保険金を請求する権利が失われます。

被保険者の範囲

◎配偶者の同居の親族・別居の未婚の子 
◎婚姻の届出をしていないが事実上婚姻関係と同様の事情にある者

支払対象外の損害

◎保険金受取人の故意は支払わない。
◎「地震・噴火・津波・台風・洪水・高潮」の事故は対象外。
◎「被保険者」同志の事故は、対象外(父親:NG 兄弟:OK)

支払の優先順位

◎請求が競合する場合は、被害者の損害賠償直接請求が優先される。

過去問

1.この保険では、被保険自動車を使用または管理中の記名被保険者またはその配偶者の別居の未婚の子は被保険者とはならない。

解答:×

記名被保険者またはその配偶者の別居の未婚の子が被保険者とならないという規定について説明されています。通常、自動車保険では、保険契約者(記名被保険者)の家族も一定の条件下で被保険者とみなされることがあります。

しかし、ここでは別居している未婚の子はカバーされないとされており、これが誤りの可能性があります。保険の範囲は契約によって異なるため、通常は別居している未婚の子もカバーされることが多いです。

2.この保険では、被保険者が被保険自動車の運転を誤り被保険者の父親が所有する住宅建物に衝突し、その外壁を破損させた場合、その損害は保険金支払いの対象とはならない。

解答:〇

被保険者が自己の過失により自身の父親の住宅に損害を与えた場合、その損害が保険金の支払い対象外であると説明しています。これは一般的な自動車保険の原則に沿っています。自動車保険は通常、被保険者の直接的な家族(ここでは父親)の財産に対する損害をカバーしません。
※被保険者またはその家族が所有する財産への損害はカバーされません。

3.この保険では、対物事故によって被保険者の負担する法律上の損害賠償責任の額について、被保険者と被害者との間で書面による合意が成立した場合、被害者は直接損害保険会社に対して保険金相当額の損害賠償額の支払いを請求することができる。

解答:〇

被保険者と被害者が書面による合意を行い、その結果、被害者が直接保険会社に対して損害賠償の支払いを請求できることを述べています。

これは「代位請求権」として知られ、被害者が直接保険会社から損害賠償を受け取ることを可能にするものです。これは損害賠償の迅速な処理と、被保険者の負担軽減を目的としています。

4.この保険では、婚姻の届出をしていないが記名被保険者と事実上婚姻関係と同様の事情にある者が被保険自動車を使用または管理している場合、当該者は被保険者とはならない。

解答:×

記名被保険者と事実婚関係にある者が被保険者とみなされないと説明されています。しかし、実際には多くの保険では、事実婚関係にあるパートナーも被保険者として扱われることがあります。したがって、この点に誤りがある可能性が高いです。

5.この保険では、被保険者が被保険自動車を運転中、他人の物を壊したときは、単にその物の損害だけでなく、壊した結果生じた休車損害や代車費用などの間接的な損害に対しても、保険金が支払われることがある。

解答:〇

被保険者が運転中に他人の物を壊した際、直接的な損害だけでなく、間接的な損害(休車損害や代車費用など)に対しても保険金が支払われる可能性があると述べています。

これは一般的な自動車保険のカバレッジに含まれており、物理的な損害のみならず、それによって発生する追加的な経済的損害もカバーすることが多いです。

1.この保険では、被害者の損害賠償額の直接請求と被保険者の保険金の請求とが競合した場合、保険会社は、保険契約の当事者である被保険者に対し優先して保険金を支払う。

解答:×

多くの保険契約では、被害者の直接請求権が優先されることが一般的です。これは被害者が迅速に損害の補償を受けることを保証するためです。したがって、この点に誤りがあります。

2.この保険では、対物事故が発生した場合で、損害防止費用のうち、応急手当、護送、診療など緊急措置のために要した費用を保険契約者または被保険者が支出し、後日、損害賠償責任のないことが判明したときは、これらの費用は緊急措置費用とし、損害の一部とみなして保険金支払いの対象となる。

解答:〇

対物事故において、緊急措置のために要した費用が保険金支払いの対象となるとの記述は正確です。緊急措置費用は、事故による損害を最小限に抑えるために必要な費用として、多くの保険契約でカバーされています。

3.この保険の保険金請求権は、保険金請求権が発生した時の翌日から起算して5年を経過した場合、時効により消滅する。

解答:×

保険金請求権の時効が保険金請求権が発生した翌日から5年であると述べています。しかし、実際には多くの国では保険金請求権の時効は2年から3年とされていることが多いです。したがって、5年という時効期間は通常の期間よりも長いため、この点が誤りである可能性があります。

4.この保険では、保険金額は対物事故が起こって保険金が支払われても減額されず、その都度自動的に契約当初の保険金額に戻る。

解答:〇

保険金額が対物事故が起こっても減額されず、その都度契約当初の金額に戻るというのは、多くの自動車保険で見られる特徴です。

これにより、事故後も被保険者は引き続き同じレベルの保険カバレッジを享受することができます。

5.この保険で「対物賠償保険の示談交渉に関する特約」が付帯され被保険者が同意していても、損害賠償請求権者が損害保険会社と直接折衝することに同意しない場合には、損害保険会社は示談交渉を行うことができない。

解答:〇

「対物賠償保険の示談交渉に関する特約」が付帯されている場合でも、損害賠償請求権者が保険会社との直接交渉に同意しない場合、保険会社は示談交渉を行うことができないというのは正しいです。

示談交渉は双方の当事者の同意が必要であり、一方の当事者が同意しない限り、保険会社は交渉を進めることができません。

1.この保険では、記名被保険者が被保険自動車を運転中に、台風のため被保険自動車が横転し、他人の自動車を破損させた場合、その破損による損害は、保険金支払いの対象となる。

解答:×

一般的に、自動車保険の対物賠償責任保険は、被保険者が運転する車両によって第三者の財産に対して生じた損害をカバーします。これには自然災害によって引き起こされた事故も含まれる場合が多いです。したがって、台風による事故であっても、他人の車両への損害は通常は保険金の支払い対象となります。

2.この保険では、対物事故によって被保険者の負担する法律上の損害賠償責任が発生した場合、被害者は直接保険会社に対して、保険金相当額の損害賠償額の支払いを請求することはいっさいできない。

解答:×

多くの国の自動車保険では、被害者は「代位請求権」を行使して、直接保険会社に対して損害賠償を請求することができます。これは被害者が迅速に損害の補償を受けることを可能にする制度です。この項目が誤っているのは、実際には被害者が保険会社に直接請求することが可能であるという点です。

1.この保険の保険金請求権は、保険金請求権が発生した時の翌日から起算して3年を経過した場合は、時効により消滅する。

解答:〇

保険金請求権の時効期間は国や地域によって異なることがありますが、一般的には2年から3年の間とされることが多いです。このルールは保険契約者と保険会社の双方に明確な期限を設けることで、古い請求に関する不確実性を減らすのに役立ちます。

2.この保険では、被害者の損害賠償額の直接請求と被保険者の保険金の請求とが競合した場合、損害保険会社は被保険者に対して優先して保険金を支払う。

解答:×

多くの保険契約では被害者の直接請求権が優先されます。これは、被害者が迅速に損害の補償を受けることを保証するためのものです。保険金の直接請求権は、被害者が保険会社に対して直接請求できる権利を指し、この制度は被害者が被保険者を通じて請求する代わりに、より効率的に補償を受けることを可能にします。

1.この保険において、法人所有の自動車の場合には、通常、その法人の代表者が記名被保険者となる。

解答:×

法人所有の自動車の場合、記名被保険者はその法人自体となることが一般的です。法人の代表者は個別に記名されることはあっても、法人の代わりに記名被保険者となることは通常ありません。この点が誤りの可能性があります。

2.この保険において、被保険者が保険会社の書面による同意を得て行った訴訟の判決による遅延損害金は、損害の一部とみなして保険金額の枠外で全額が支払われる。

解答:〇

訴訟の判決による遅延損害金が損害の一部とみなされ、保険金額の枠外で全額支払われるというのは正しいです。これは、保険会社が訴訟を承認し、その結果生じた追加的な費用も補償することを意味します。

3.この保険では、記名被保険者の配偶者(内縁関係にある者も含む)が被保険自動車を使用または管理している場合、当該配偶者は常に被保険者となる。

解答:〇

記名被保険者の配偶者(内縁関係にある者を含む)が被保険自動車を使用または管理している場合、当該配偶者が被保険者となるというのは正しいです。これは、配偶者や内縁のパートナーも通常、記名被保険者の範囲に含まれることを示しています。自動車保険では、記名被保険者の直接的な家族が同じ保護を受けることが一般的です。

4.この保険において、被保険自動車を競技のために使用することによって生じた損害は保険金支払いの対象とはならないが、試験を行うことを目的とする場所で被保険自動車を使用することによって生じた損害は保険金支払いの対象となる。

解答:×

競技や試験目的での使用によって生じた損害は通常、保険の範囲外とされます。競技や試験といった特定の目的での使用は、一般的な運転リスクよりも高いと見なされるため、これらの状況における損害は通常は除外されます。

1.この保険において、正当な理由の有無に関わらず、被保険者が保険会社の示談交渉等 による解決に対する協力を拒んだ場合、保険会社は示談交渉等を行うことができない。

解答:×

保険会社は被保険者の協力の有無にかかわらず、示談交渉や関連する解決策を進めることができます。保険会社の目的はリスクを管理し、損害を効率的に解決することにあるため、協力を拒否する被保険者の存在が示談交渉の障害になることはありません。

2.この保険において、被保険者が運転を誤り被保険者の兄が所有する自動車に接触し、破損させた場合、その損害は保険金支払いの対象となる。

解答:〇

自動車保険の対物賠償責任保険は、被保険者が運転中に第三者の財産に対して引き起こした損害をカバーします。この場合、兄が所有する自動車も第三者の財産とみなされます。

3.この保険において、被保険自動車を運転中に他人の物を壊したときは、その物の損害 だけでなく、壊した結果生じた間接的な損害に対しても保険金が支払われることがある。

解答:〇

自動車保険は通常、被保険者が引き起こした損害の全範囲をカバーすることを目的としています。

4.この保険では、損害防止費用・緊急措置費用・争訟費用に限り、損害の一部とみなして保険金が支払われる。

解答:×

これらの費用以外にも、様々な種類の費用が保険金の支払い対象となることがあります。例えば、修理費用や医療費などがこれに含まれます。この項目が誤っているのは、保険金支払いの対象となる費用の種類が限定的であるという誤った前提にあります。