外壁のタイル張り工法、ツーバイフォー構法、繊維板の特性、広葉樹と針葉樹の強度比較、基礎の設計、床下の湿気対策、筋かいの種類、屋根葺材料の選定、木材の部位と特性、木材の接合方法、構造材の寸法、建具の取り付け、妻板戸袋の構造などです。
これらの問題は、建築の基本的な理解、材料の選択、施工技術の知識を問うており、建築学や建築工学における実務的なスキルの理解を測定していると言えます。
木構造の特徴
木構造は、木材を組み立てて作る構造である。
モクザイを骨組みとする木構造には、次のような特徴がある。
木構造のメリット
①木材は、切欠きなどの加工性に優れ、取付作業がしやすい。
②木材は鋼材やコンクリートに比べ、軽量な割に強度が大きく柔軟さがある。
③木目が美しく、肌触りや香りがよい。
木構造のデメリット
①木材は燃えやすく延焼を受けやすいため、不燃材料などで被覆する必要がある。
②接合部が弱く、骨組みが変形しやすい。
③湿気により腐れや虫被害を受けやすい。
在来軸組構法
木材で土台・柱・桁・梁などの主要な部材を組み立てて作る架構式の構造形式を在来軸組構法という。
コンクリート基礎の上に木材の土台を設置し、壁の骨組みである軸組に屋根の骨組みである小屋組みを組み立てていく構法。
木材の種類
木には、葉の形状により針葉樹と広葉樹に大きく分けられる。
針葉樹
針葉樹は、一般にまっすぐで長大材が得やすいため、柱・土台・梁などの構造材だけではなく、床・壁・天井などの仕上げ材や建具材などにも広く用いられる。
また、針葉樹は加工しやすく軽いため軟木といわれる。
広葉樹
広葉樹は、針葉樹に比べ一般に強度が大きく硬いので、堅木といわれる。木肌に美しい模様をもつものが多いので、床・開口部・家具・建具などの仕上げ材に使用される。
木材の組織
木材は、樹皮・木部・髄で組織されている。
樹皮のすぐ下の形成層では、細胞分裂が起こり、形成層の外側に師部を内側に木部を形成する。
木部においては、樹皮に近い色調の淡い部分を辺材、その内側の色調の濃い部分を心材という。
一般的に、心材は辺材より硬質で重く強度が大きい。乾燥にともなう収縮・曲がり・反りなどの狂いが少なく、樹脂が多いので削ると光沢がでる。また、腐りにくく耐久性があり害虫に対しても強い。
乾燥による木材の変形
木材が含む水の質量を、その木材の質量で割った百分率を含水率という。
この含水率が約30%以上では、含水率が変化しても木材の伸縮が生じないが、それ以下ではほぼ含水率に比例して伸縮が生じる。この約30%の含水率を繊維飽和点という。
木材の強度
木材の密度は、一般に気乾材の密度で表す。
木材の圧縮や引っ張りの強度と繊維方向との関係は、繊維に直角方向よりも繊維方向の方が強く5~10倍ある。
燃焼
木材は、熱せられると100℃で成分の熱分解が始まり、水素やメタンなどのガスを発生し、約260℃に達すると引火する。
周囲に炎がない場合でも、450℃に達すると自然発火する。
木質材料
木質材料とは、木材を切削して、小さい板や薄い板、小片とし、または繊維状にしたものを接着・成形した材料である。
この材料は、木材の欠点を除き、または分散し材質を均一化することで、小径の木材や製材で不要となった木材を有効利用できるという優れた面がある。
繊維板
木材やわら、麻などの原料を繊維状にし、加熱圧縮して成形した板材を繊維板という。
均質な大きな板材が得られ、くぎ打ちしやすく加工性に富んでいる。
パーティクルボード
木材の小片に接着剤を混合して加熱・圧縮成形した板状のものをパーティクルボードといい、強度は合板より劣る。
過去問解説
1.心材と辺材の乾燥収縮の割合は、心材の方が大きい。
2.住宅の建具の開閉方式は、引違いや片開きが多く用いられているが、気密性は一般的に開きより引きの方が良い。
実際には開き戸の方が気密性が高いことが一般的です。開き戸は適切に設計され、シーリング材を使用することで、しっかりと密閉することが可能です。
3.木造枠組壁構法の小屋組のうち、トラス方式は、大スパンの小屋組に向いている。
4.耐力壁の配置量は、壁の水平断面の長さで表すが、壁の構造により水平力に抵抗する力が異なるため、実際の長さに所定の倍率を乗じて求める。
5.屋根を金属板葺で仕上げる場合、雨仕舞は瓦棒葺に比べて平板葺のほうがすぐれている。
問題文は金属板葺の雨仕舞が瓦棒葺に比べて優れていると述べていますが、実際にはどちらが優れているかは一概には言えません。金属板葺と瓦棒葺はそれぞれ異なる特性を持ち、適切に施工されればどちらも良好な雨仕舞性能を提供します。
6.柱に用いられる心持ち材では、人目に触れる面に生じるひび割れを防ぐため、あらかじめ人目に触れにくい面に背割りを入れる。
7.土台は、水平力により基礎から浮き上がったり、ずれたりするのを防ぐために、かど金物で固定する。
実際にはアンカーボルトやホールダウン金物なども一般的に使用されます。重要なのは、適切な方法で土台を基礎に固定し、建物の構造的安定性を確保することです。
8.断熱材には、省エネルギーの効果をもたらし、建築物の耐久性や快適性の向上が図られるという効果が期待できる。
1.一般木材の心材と辺材を比較すると、一般的に心材の方が辺材より腐りにくく、虫害に対しても強く、耐久性がある。
2.構造材の継手や仕口を工場でプレキャスト加工されるものが多くなっている。
構造材の継手や仕口は現場で加工されることが一般的です。
3.住宅の基礎底面の深さは、一般に、地盤面より 15 ㎝ 程度とすることが多い。
多くの場合、凍結線以下に基礎を設置する必要があり、これは多くの地域で15cm以上の深さを意味します。
4.胴縁、野縁、額縁のうち、壁下地材として使用されるのは胴縁である。
5.引張力に抵抗する筋かいは、圧縮力に抵抗する筋かいよりも一般に大きい断面積を必要とする。
圧縮力に抵抗する筋かい(圧縮材)の方が大きな断面積を必要とすることが多いです。圧縮材は圧縮による座屈を防ぐために十分な剛性が必要で、そのために大きな断面が求められます。
6.開口部は枠と建具から構成され、大壁の場合には、枠の取付けや開口部回りの軸組を補強するため、窓台や窓まぐさを設ける。
7.軒先やけらばに用いる瓦は、風で飛ばされないように、それぞれ 2 枚通り以上を 1 枚ごとに銅線や銅釘で野地板に緊結する。
8.木造枠組壁構法では、鉛直荷重や水平力に耐えられるように耐力壁線に囲まれた面積が 60 ㎡以下になるように構成・配置する基準がある。
木造枠組壁構法で耐力壁線に囲まれた面積を60㎡以下にする基準があるとされていますが、実際にはこのような具体的な面積に関する制限は一般的ではありません。
ア.片側筋かいと間柱の交差する部分は、間柱を欠き取らずに筋かいを切り欠くようにする。
片側筋かいと間柱の交差する部分で筋かいを切り欠くようにするとされていますが、実際は通常、間柱を欠き取ることが多いです。
イ.針葉樹は、一般にまっすぐで長大材が得やすいため、柱・土台・梁などの構造材だけでなく、床・壁・天井などの仕上材や建具材などにも広く用いられる。
ウ.基礎の種類は、杭基礎、べた基礎、布基礎、独立基礎があるが、どの基礎を用いるかは地盤の許容応力度の大きさで決まる。
エ.和小屋は、比較的小さな断面の部材を組み合わせることで小屋組を構成し、洋小屋に比べて大きな梁間に適している。
和小屋は小さな断面の部材を組み合わせても、大きな梁間に対応するのは難しいです。和小屋は伝統的な日本の建築様式であり、通常、小規模な建物に適しています。
オ.雨戸は、しゃ光・保温・防犯、建具ガラスの保護などの面で効果があり、一筋かもいとすることが多い。
カ.階段の形式には、側桁階段、ささら桁階段などがあり、一般にはささら桁階段が用いられる。
階段の形式は建築物のデザイン、スペース、機能要件に応じてさまざまです。側桁階段もささら桁階段もよく使用されるタイプであり、どちらか一方が一般的に使用されるとは限りません。
キ.屋根仕上げにおける平板葺きでは、一般的に一文字葺が多く用いられる。
ク.外壁のうちモルタル塗は、防火性能が要求される外壁には用いられない。
モルタルは防火性能を有する素材として知られており、耐火性や非燃性の要求される建築物の外壁に広く使用されます。
ア.内壁を塗壁とする場合、特に耐水性・耐火性の要求される台所・浴室などにはプラスター塗、和室にはモルタル塗が用いられる。
和室でモルタル塗を使うことは一般的ではありません。和室では、伝統的には土壁や石膏ボードに襖(ふすま)や障子などが用いられます。
イ.木材は、約 30%である繊維飽和点の含水率を下回ると、ほぼ木材の含水率に比例して伸縮が生じるようになる。
ウ.外力に安全な軸組にするためには、桁と梁の水平角を固定し、堅固な接合となるよう、妻梁を入れる。
軸組み構造の安全性を高めるためには、構造全体のバランスと連結が重要です。妻梁の使用はその一部分に過ぎず、柱と梁の接合部の強度、筋交いの配置、接合部の種類(例えば、ボルトや釘など)も安全性に大きく寄与します。
エ.といは、屋根面から雨水を下水溝、下水管に導くためのもので、軒どい・呼びどい・はいどいなどがある。
オ.屋根には雨仕舞をよくするために勾配を付けるが、住宅屋根用化粧スレート葺の方が瓦葺より最低勾配が大きい。
瓦葺の屋根の方が化粧スレート葺の屋根よりも一般的に勾配を大きくする必要があります。瓦は重量があるため、適切な排水を確保するためにはより急な勾配が必要となる場合があります。
カ.木材の小片に接着剤を混合して加熱・圧縮成形した板状のものをパーティクルボードといい、合板より強度が劣る。
キ.砂質の地盤は、おもに砂と砂の摩擦力で荷重を伝えている。
ク.耐力壁は、建築物の外周部より中央部に配置した方が効果的である。
耐力壁の配置は建物の全体的なバランスと構造設計に依存します。外周部に耐力壁を配置することは、構造の安定性を高めるために非常に一般的で効果的な方法です。
1.外壁の張り壁の一種である乾式工法タイル張りは、モルタルを用いずに張るため、モルタルの硬化を待たずに施工でき、工期を短くできる。
2.ツーバイフォー構法の長所は、加工・組立が簡単であり、熟練した高度な技術を必要としないことである。
3.木材、わら、麻などの原料を繊維状にし、加熱圧縮して成形した繊維板は、均質な大きな板材が得られるが、釘打ちがしにくく、加工性は限定される。
繊維板は釘打ちがしにくく、加工性が限定されるとされています。実際には、繊維板は様々な密度があり、密度が高いもの(ハードボード)は釘打ちが難しい場合がありますが、密度が低いもの(ソフトボード)は釘打ちが比較的容易です。
4.広葉樹は、針葉樹に比べ、一般に強度が大きく硬いので、堅木といわれ、柱・土台・梁などの構造材に広く用いられる。
広葉樹は一般に針葉樹より強度が大きく硬いため、家具や床材、装飾材などに好まれますが、その硬さと重量のため、構造材としては針葉樹がより一般的に使用されます。針葉樹は加工が容易で、構造材としての要求に適しています。
5.基礎をつくる場合、地盤の地耐力を調べ、基礎の位置と、基礎底面の深さ・広さを決定する。
6.防湿策を施していない床下は地盤に近いため、湿気による腐朽・白蟻の被害が多いことから、直下の地盤面より床仕上げの高さを 30 ㎝以上とし、床下換気口による通風や防腐・防蟻の薬剤を用いることが不可欠となる。
床仕上げの高さは地域や建物の設計によって異なります。また、床下換気口の設置や防腐・防蟻薬剤の使用は重要ですが、床下の防湿策は床仕上げの高さだけでなく、換気、防湿シートの使用、地盤の排水性の改善など、多角的なアプローチが必要です。
7.筋かいには引張筋かいと圧縮筋かいがあり、圧縮力に抵抗する圧縮筋かいは、引張筋かいよりも断面の大きいものが用いられる。
8.屋根葺材料は、熱伝導率が高いものを選定する。
屋根材料選定の際には、低い熱伝導率を持つ材料が望ましいです。これは、熱伝導率が低い材料が夏の暑さや冬の寒さを効果的に遮断し、室内の温度調節を容易にするためです。
1.木部においては、樹皮に近い色調の淡い部分を心材、その内側の色調の濃い部分を辺材という。
木部の内側にある色調が濃い部分が心材で、外側の樹皮に近い色調が淡い部分が辺材です。
2.木材の接合では、二つ以上の部材を堅固に組み合わせるため、カシやケヤキなどの堅 木でつくった栓・くさび・だぼなどを用いるものがある。
3.土台の断面寸法は、柱と同じか、ひとまわり小さくする。
土台は構造的な要求に基づいて選定され、多くの場合、柱の断面寸法よりも大きくなることがあります。土台は建物の重量を支え、地盤へ伝える重要な役割を果たすため、適切な強度と安定性を持つための寸法が求められます。
4.柱の上端・下端は、一般的にほぞをつくり、土台・軒桁・胴差に差し込み、山形プレ ート・羽子板ボルト・短ざく金物などで補強する。
5.束を建てない床組のうち、梁床では、床梁せいが異なる場合の継手を持出し継ぎとしてはならない。
通常「大入れ継ぎ」や「金具接合」とすることが一般的です。持出し継ぎは強度や安定性に問題が生じる可能性があるため、適切な継手方法が求められます。
6.建具を開閉できないように枠に固定した方式は、はめ殺しという。
7.妻板などから組み立てられた妻板戸袋は、正面に下見板などを張ることが多く、雨戸 の繰出しには妻板の中間部を切り欠くほか、戸袋の内壁に繰出し窓をつける場合もある。
8.木造枠組壁構法の小屋組において、棟木の左右が非対称な場合や勾配が . 2.5/10以下の場合には屋根梁方式を用いず、垂木方式とする。
棟木の左右が非対称であっても屋根梁方式が使用される場合があります。重要なのは、屋根の形状、サイズ、構造的要求に基づいて適切な屋根組み方を選択することです。垂木方式は一般的に広く使われますが、建物の設計や条件に応じて屋根梁方式も適切に利用されます。
問題文では心材の方が乾燥収縮の割合が大きいとされていますが、実際には辺材の方が乾燥収縮の割合が大きいです。